某編集部時代にお世話になった方が亡くなった。
当時はテクニカルライターと編集者というお付き合いだったが、編集部を辞してこの方10年、折にふれお話しする機会に恵まれ、その度に彼の博識ぶりと聡明さ、そして時折覗かせるユーモラスな一面に、憧れと尊敬の念を抱かせてくれる人だった。
とくに近年は、専門性に秀でたネットショップを立ち上げて、みるみる成功をおさめられている様子を見るにつけ、「やっぱりすごいな~」という気持ちと、「いつかこの人と肩を並べられるような仕事をしたいな~」という気持ちでいたように思う。
つい先日、部屋の本棚を整理していたら10年前に担当したMOOK本が出てきた。巻頭記事は、そのI氏に書き下ろしをお願いした企画で、その風貌と博識ぶりに中国の偉人を連想した私が、I氏に孔子になりきって論語さながらに、とあるソフトについて語ってもらったものだ。彼の特徴をとらえた絶妙なイラストとあいまって、今読んでもけっこう面白い。我ながらイイ仕事をしたもんだなぁ~と自画自賛に浸っていた矢先の訃報だった。
今朝、告別式に向かう電車の中で、半年前の飲み会でI氏に言われた言葉がよみがえった。
「(なんでもありますの)イトヨーカドーを目指してはダメ。若松屋を目指しなさい」
何か新しいことを始めたいと宣言した私へのアドバイス。今、あらためて心にしみこんできております。