雨の少ない梅雨時期の、それでもしとしと降りしきる夜に、川のほうからなにやら鳴く声が続いていました。
この渓谷には野生動物がたくさん住んでいます。
親とはぐれた子どもかもしれません。
ますます声は大きく悲しそうで、ベッドの中でじっとしていられなくなりました。起き出して、川の近くまで行くと、目がキラリと光るタヌキでした。
誤って川に落ちたのか、流れる水からすこしばかり浮き出た石の上でオロオロしていました。
網を岸から垂らして這い上がる仕掛けを作ってみたり、バナナを吊るしてみたり、だけど切れて川に流されました。ポトン。
そうこうしているうちに、足元の石ころが転がり落ちて、ドボンという音に驚いたタヌキは川を泳いで逃げました。
なんだー、泳げるんじゃないの。
親ばなれしたばかりのたぬきだったのかもしれません。
大きくなってね、ぬーすけ。
かわいい名前をつけて、また姿をみることを楽しみにしています。